ランチ二回分のお金で学ぶ、Sweetな英会話フレーズ集。
このブログでも、過去何冊かオススメしている、ディビット・セインさんの新刊です。
「省略英会話BOOK ― ここまで略しても通じる!」 (David A.Thayne 、小池 信孝 著、主婦の友社、1,050円)
日本語には、短くてすむところをあえて長くして全体の衝撃を和らげ、聞き手に配慮する…といった性格が、ひとつの方法というか、もともとの機能としてあるように思います。
なので、日本語では長い文章であること自体、必ずしも悪いことではないのですが。
日本語の場合、意味は同じであっても、短い意図を長くぼかして表現することで相手に配慮するという効果を狙うし、文の長短でそのニュアンスもはっきり違ってくると思うんですよね。
だから日本語では、ニュアンスとして短い文章=長い文章、ではないケースも多い。
そのせいか、英会話学習者の中には、短い表現だとぶっきらぼうで聞き手に失礼なんじゃないか…と、よけいな気を回して(笑)心配する人が、結構います。
この本にも書かれているとおり、現代英語は、たとえ表現として短くとも、長い文章とまったく相手に与えるニュアンスが変わらず、失礼にも当たらないものがほとんどです。
むしろ短いほうが機能的で美しい、この本でいうところの"Short and sweet English"として、聞き手に好まれるもの。
相手にとって失礼かどうかは、文の長短というよりも、使っている単語やその中味で判断されるのが英語、ということになるでしょうか。
日本人がついやりがちな、「正しいながらも長い英語」を、長くてもせいぜい2語~7語程度でこう言える、という視点で、様々な生活シーンにおける短い英語表現を、シンプルな解説もつけてコンパクトにまとめあげた一冊となっています。
ところでこの本のタイトル、商業的インパクトはありますが、厳密には「省略」というのは、ちょっと違うんじゃないか…と思いました。
「省略」を国語辞書で引くと、「簡単にするために、一部を取り除くこと」などと定義されていますよね。
この本にある数々の短い英語表現は、わざわざ為に短くしたわけではなく、もともとこの本に掲載されているような短い表現が、「英語という言語の本質に即した、正規の表現」に属していると思うのですよ。
長い文章の適切な表現があって、そちらが本来的に正しいのだけれども、意が伝わる程度に短く「省略」したということではなくて、「最初からこれだけで必要十分な、短い英会話表現」を、主に集めている本なのです。
Modern Englishでは、短くてすむところを、薄めて長く引き伸ばした表現にすることこそむしろ避けるべき、とされていますからね。
だから、「省略英会話」というのは、厳密には多少のズレがあると思う。
ま、マーケティング的にはインパクトのあるタイトルになっているし、さほど目くじらたてることでもないですけどね。
さて、肝心の中味ですが…。
ディビット・セインさんのこれまでの著作同様、Simple and clearな英会話フレーズが、一冊を通してちりばめられています。
他の著者の日常会話フレーズ集に比べて、いかにもこういう言い回しは使いそうだな、よく出てきそうだな、と思わせる小気味よいフレーズを集めているところなど、秀逸だと思いますね。
収められている表現の中味といい表現数といい、全体にほどよく読みやすい分量にまとめあげていて、しかもお値段もほぼ千円です。
英会話のキレをあげたいなら、ランチ1、2回程度を節約してこの本を買って、掲載されている表現を頭から丸暗記していくことを、オススメしたいですねぇ。
後半の「省略英会話がスラスラ話せる10のポイント」も、とりわけ英会話ビギナーにとっては、会話文を自分の頭の中で組み立てるための良きヒントが、ちりばめられています。
以前、英会話学習本、近頃は良書多し。またまた、必読の一冊。でもちょっと触れましたが、英会話の上達のために、ある程度一文が長い文章を意識しておぼえていく必要があることも、会話力の地力をつけるためには大切なことです。
しかし、それは「コミュニケートするのに短くてすむ文章を、無理やり長く引き伸ばす」こととは、全然違いますからね。
英文として短かかろうと長かろうと、自在に表現を操ってしゃべることができる領域を目指しているならば、最終的には両方とも、マスターする必要があります。
ただし、まだ英語・英会話のビギナーに属すると自覚している人なら、順番としてはこの本に掲載されているような短い表現から、先におぼえていくほうがよいでしょうね。
なぜなら、Simple and clearな英会話フレーズを、たくさん体におぼえこませていくことで、英語的な発想とはどういうものかについての「感覚」が少しづつ自分の中にしみこんでくるものですが、学習の初心者ほどその効果が顕著にあらわれると思うので。
そういう点でも、見過ごししてしまうにはもったいない英会話学習本だと思いますので、本書を当ブログにおける推薦図書(笑)扱いとさせていただきます。
さ、本日と明日のランチをskipして、英会話フレーズの仕込みに充てましょう!