英語の上達のために、「英語の歴史」の本を一冊読んでおこう。
思うんですが「英語や英会話がペラペラになりたいなら、これをやんなきゃ!」的アプローチの中でも、「英語の歴史を学んでおきましょう」っていうのは、ほとんど見かけないですよね。
ま、自動車の運転免許が取りたい人に、「まずはエンジンの構造を知っておきましょう」というようなものですから。「まだるっこしい」と思われがちなのはわかるんですけど。
最近、英語とかラテン語の歴史本にハマって何冊か読んだせいもあるんですが、「あ、これって英語の勉強をし始めた頃に知っていたら良かったのに。こんなにも長い間、モヤモヤした感じを引きずらなくて済んだのに。」と読んでいる間にしばしば感じたので、同じような人も少なからずいるんじゃないかと。
学習上の壁を一つ取り除いてくれるなら、これも立派な英語・英会話の上達法と思うわけです。
外国語を勉強しているときって、よくわからないままそのまま丸暗記に走ったり、説明に納得がいかなくても「そういうものか」と深く考えずに受け入れたりっていうのは、当然ありますよね。
一概にそれが悪いとも言えないのですが、ただちょっと突っ込んで調べればわかることを「アメリカ英語とイギリス英語の違いだから」「言葉なんだから例外があって当たり前でしょ。丸暗記してね」で済ませてきたことも、個人的にはずいぶん多かったですね。
何十年も英語や英会話の勉強を続けていると、自分が完全に忘れちゃっているだけで、かつて誰かがちゃんと説明してくれていたこともあったかもしれません。
でも忘れているってことは、さほど印象には残らなかったということ。
個別的に説明を受けただけで、どういうプロセスでそうなっているのかという「文脈」を欠いていたために、脳がさしたる刺激を受けなかったのかもしれません。
英語の成立期から現代英語に至るまで、時間の流れにそって英語という言葉がどう移り変わってきたのか、そして今日どういう問題を抱えながら現代英語として今も変化を続けているのかについて、まとまった形で一つの説明を受けた記憶が無いんですよね。大学生の時に英語史のコマをとっておけばよかったのかな。
ま、少なくとも、英語のベースを自分の中に形作る多感な中高生の時に聞いときたかったなって思うネタは、今回読みあさった英語の歴史本でたくさん見つかりました。
例えば、なんで'you'だけが「あなた」とその複数形「あなたたち」の両方を兼ねているかとか、理由を考えてみたことがありますか?he/sheの複数形は、'they’というまったく違った形をとっているのに。
あと、なんでmustだけ過去形が無くて、全然違うhad toを使っているんだとか。ご存知ですか?
Do you have any money?とHave you any money?との違いなども、ワタクシ結構長いこと「英米の違いだろう」くらいで考えるのを止めて、丸暗記してましたよ。(これは「助動詞doの重要性の変化」や「語順の固定化」などが背景にあるのですが、詳しくは以下の本とかを読んでみて下さいな)。
だいたい恥ずかしながら、いわゆる「ノルマン征服」以降、イギリスが言語的に200年くらいフランスに取って代わられていたことすら、ようやく最近その歴史的な意義がわかったような有り様です。
ノルマン征服とか、ルネサンスがイギリスに及ぼした影響とかって、世界史の授業でちゃんと勉強していたはずなのに、それによって英語が言語的にどれほど大きな影響を受けたのかについては、頭の中でまったくリンクしてなかったわけですね。
ゴロとかで無駄に年号だけは覚えてるんですけどね、「ノルマン、トロールで征服(1066)」とか。完全に受験用で、歴史的な意義なんかも頭の中から飛んじゃってるわけですね。
世界史は世界史、英語は英語ということで、脳内で完全に別ルートを走ったままで、つい最近まで来ていたわけです。たまたま英語の歴史に関わる本を読んで「こういうのもっと早く勉強しとけよ、オレ」、とか思っているわけです。
もちろん受験生は英単語の暗記だの英文読解だのが最優先なんでしょうけど、早いうちに一冊くらいは読んどくといいと思うけどなぁ。いま社会人で英会話のレッスンにいそしんでいる人なら、なおさらです。
もちろん英語の歴史をまったく知らなくても、いわゆるビジネス英語だの日常英会話だのは、問題なく上達していくでしょう。でも、英語がたどってきた歴史のプロセスを知る前と知った後とでは、英語に向き合い理解しようとするときの自分の心の持ちようが、おそらく変わってきます。
規則性に乏しく、無理やり覚えるしかない面もあるその一方で、様々な他言語を取り込んで発展するダイナミズムに感心する瞬間もあるわけですが、これも英語がたどってきた歴史を振り返ると、たしかに納得できる面があります。
そのことを知っているだけでも、丸暗記を強いられているような感覚はずいぶんと軽くなることでしょう。「こういう歴史的背景があるなら、まぁしょうがないかな」くらいの気分に、不思議とさせられるのです。
とある本で「ラテン語と比べて英語というのは、ずいぶんだらしない言語に思える」という、厳しい評価も目にしました。それなら現代の日本語だって、負けちゃいませんよね。
よく言えば変化への適応力に優れた言語、悪く言えばだらしない言語。
英語以外の外国語もかじっている方は、英語や日本語との歴史的な違いに思いを巡らしてみるのも楽しいかもしれません。
1,500年以上の時間をかけ、絶滅の危機にもさらされながらもここまで成長してきた英語の歴史をおおまかに知ることによって、いわゆる「腑に落ちる」感覚と多少の気持ちの余裕を持って、英語が抱える曖昧さや矛盾に向き合えるようになります。
ネットでも良いサイトはいっぱいありますが、まず基本書を一冊通読しておくことをおすすめしたいですね。その後他の本やWikiその他解説サイトを併せ読むことで、さらに理解が深まると思います。
ワタクシも数冊読んだに過ぎませんが、以下の2冊はおすすめしときたいですね。忙しい人は、この2冊をきちんと読むだけでもOKと思います。
「英語の歴史―過去から未来への物語 」 (寺澤 盾 著、中公新書)
「英語史入門」 (橋本 功 著、慶應義塾大学出版会)
「英語の歴史」でおおまかに縦の時間の流れをつかんで、「英語史入門」で個々に事例を確認して横糸を通していくイメージですね。
最後にこれらの本の巻末に載っている「英語史年表」を見て、だいたいの流れがイメージ出来たら合格?じゃないかしらん。
ということで、自分の英語や英会話にもっと厚みをつけたいなあと思っている方は、英語の歴史本をちょっとくらい読んどいても損はないと思います、ハイ。