『円高だ、海外旅行だ!』、それならこの旅行英会話本をオススメ。
    英語の勉強はおろか、思考力とスタミナそしてやる気を根こそぎ奪うかのごとくの熱波の季節が、ようやく過ぎ去りつつありますね。
    
    まぁまだ9月が控えているので、油断もできませんが。
    
    
    それでも、そろそろ6月頃を最後に手が止まっていた英単語集をもう一度開いてやってもいいかな…というくらいの季節感は、ソロソロと感じられるようにはなってきました。
    
    そんな中で、「それじゃ英語・英会話の勉強をユルユル再開してみようか、え~と何か適当な題材は…」とお探し中の貴兄に、本日は一冊オススメ本をご紹介したいと思います。
    
    絵で見てパッと言う英会話トレーニング 海外旅行編(Nobu Yamada著 学習研究社 1,680円)
    
    まだAmazonのレビューも見当たらない、11年8月初版の新刊ですが。
    
    でも、しばらく英会話レッスンの類から遠ざかっていたアナタには、英語学習再開のリハビリを兼ねてという意味でも、この本はなかなかオススメだと思うのですよ。
    
    
    それに「いま海外に行かずしていつ行くの?」というくらいの超円高が、当面は止みそうもない昨今。
    
    「海外旅行」にテーマが絞りこまれている点も、タイムリーかつ実用度満点でイイんじゃないでしょうか。
    
    
    中級者以上の方なら、「いまさら旅行英会話なんか困らん」と、内心自信をお持ちの方も少なくないでしょう。
    
    しかしですね、自信をお持ちのハズのその旅行英会話力も案外、「通じればいい」程度の感覚で、知っている単語を適当につなげただけのブロークンに近いレベルではないでしょうか?
    
    
    部屋の空きをフロントで訊ねる時に、"Twin room available, 2days, OK?"とかやっても確かに通じるし、まず困らないのですが。
    
    しかし学生のバックパッカーならまだ許されるにせよ、30半ばを過ぎたいい分別と教養のあるオトナなら、そういうインスタントな英会話はちょっと口にしたくないよな…という感覚を心の奥底に持っていてしかるべきだと、ワタクシなどは思うんですよね。
    
    自らを中級者レベルと自覚するならば、「海外旅行で使う水準の英語だからこそ、冠詞や丁寧表現などの細かなことまで含めて、きちんとした英語を話せなくてはならない」と思うほうが、むしろ自然じゃないですかねぇ。
    
    
    …さて、それではこの本の何がよいのか?ということですが。
    
    最大の特長は、一つのシチュエーションごとにすべて、カンタンな説明を付したイラストを充当していることです。
    
    このイラストはすべて(リンク先の表紙イラストを見てもお分かりのとおり)、旅行する自分自身の目線でみた風景が描かれています。
    
    本書の紹介を借りるならば、『自分でビデオカメラを持っているような「1人称視点」』で描かれたイラストが、比較的大きめにレイアウトされているのです。
    
    読み手であるアナタはこのイラストを見ながら、あたかも自分が飛行機の上でフライトアテンダントと向き合っているかのような、旅先のレストランでメニューを見ながら注文をまさに入れようとしている時のような、そんなデジャヴュ(既視感)をありありと感じることができるのです。
    
    
    今その場所に自分がいるかの如く、はっきりしたイメージが付与される個々のシーンで、自分が伝えたいことを「パッと」しかも「正しい英語で」言えるかどうか。
    繰り返し発話練習し、自分の口から出た表現とパーフェクトな解答例と照らし合わせてみることで、誰もがカンタンと勝手なイメージを持っている(したがって、ちゃんとした発話訓練などもそうそうやらない)「海外旅行英会話」が、モノにするまでに結構マメな練習を必要とすることに改めて気づかされるでしょう。
    
    ちなみにこの本の著者は、このメソッドを「FPS(First-person view speaking)」と名付けたそうです。
    
    
    ちまたの海外旅行英会話本はご存知のとおり、日本語表現と英語表現をただ単にセットでズラズラと並べてあるものが大半です。
    
    そこには丸暗記すること以外、想像力の入り込む余地などなかなかありません。
    
    
    しかしこの本を使って、たとえば飛行機の通路であなたの座席のひざ元に屈み、やや上目使いの視線であなたの発する言葉を待っている客室乗務員のイラストを見ながら会話練習をするとき、あなたの眠っていた想像力は解き放たれます。
    「毛布をもう一枚もらえますか?」という設定例だけでなく、「ヘッドホンが壊れているんですけど」「隣の客のいびきがうるさいんで、席を代われますか」「入国書類の紙はありますか」等々、自分の頭に次々に浮かんできたシーンも、正しい英語表現をあわせてインプットしていくとさらに楽しいでしょう。
    
    
    少しずつ涼しくなってきて、さてまた英語学習でも再開しようかな…という頃にこういう本を一冊手にとって、訪れたい先をあれこれイメージしながらカフェでチェックしていくのって、とっても楽しいんじゃないかと思うわけです。
    
    
    まぁ、こんな風に読み手の想像力を刺激する英会話本がなかなか見当たらない理由ははっきりしていますけどね。
    
    フレーズ別にひとつづつぴったりイメージがはまるようなイラストをあれこれ考えて書きおこし、実際にページに充てていくのって作業が大変すぎて、費用対効果でいくと普通はやっていられないですよ。
    
    本の制作コストや紙面に占めるイラストのスペースなんかを考えたら、そういう企画はDVDとかでやってくれ…ってなるのが、編集発行する側の論理なんでしょう。
    
    
    しかしそのあたりを度外視(?)して、読者目線でていねいに編んでいくと、この本のようにステキな英会話練習本が出来上がったりしちゃうわけです。
    
    ということで、収録表現数は決して多いとまでは言えませんが、(本のオビにも書かれているとおり)自分のなかの「発話の回路」を育てたいと思う方に、オススメの一冊です。