英語・英会話の本選びは、技術やノウハウを「一つだけ盗む」つもりで。
久しぶりに大型書店の英語・英会話コーナーに行ってみましたが、相変わらず目まいがするくらいのボリュームです。
最近ますます発行が増えてるんじゃないの?ってくらいに、そのノウハウも実に多種多様。
まぁ売れ行きを考えたら当たり前なんでしょうけど、やはりあいも変わらず「安・近・短」路線が、圧倒的に優勢のようです。
タイトルだけみると、「8秒」と打った本がありましたが、これが現時点で最短では(笑)。
「1分間」というのも目につきましたね。
いまや「3ヶ月や半年で身につけましょう」って言ったら、なにノンキなことを!と叱られそうな勢いです。
皆さんそんなに急いで、一体どれだけ忙しいんだか…。
何十年も腰を据えて気長にガンバリましょう…ってこのブログのようなコンセプトの本は、目に入った限りではありませんでした。
当然ですかね。秒単位で勉強するこのご時世に、ちょっと勝ち目はアリマセン。
日本語をひととおり聞いて・話して・読んで・書いてと、自在に扱えるようになるまでにかかった年数の長さを素直に思い返してみても、はじめて触れる異文化圏の単語やフレーズ・文章を、そんなに短い時間で思い通りに使いこなせるわけないと思うんですが。
やっぱり「大脳生理学」とか「科学的メソッド」とかでドンと迫られてしまうと、なんというか魔法のような方法がどこかにあって、それが私の中の未知なるパワーをすべてを引き出してくれる…などと夢見てしまうんでしょうね。
ワタクシもこれまでの数十年はサンザン英語・英会話の本を買い込んできましたので、そのヘンの心理はよくわかります。
ただねぇ、出張や旅行の数日間だけ持てばOKっていうのならともかく、外国語をそれなりに身につけようと思っているならば、やっぱりあんまりセカセカと急がないほうがいいと思うんですよ。
上の本のように、「できるだけ急げ!人生は短いぞ!」って真逆のコンセプトを主張する方も世には多いんで、そのあたりはいま実際に勉強されてる皆さんの判断ひとつになりますが。
ただ数十年の経験から言わせてもらえば、ふつうの人にとって「急いで身につけたものは、そのぶん急速に溶けてなくなる」んですよ。
こんだけ何百冊も英語・英会話関連の本を読んできたのち、それなりに英語の力がついた自分の過去を、いま振り返ってみてですね。
何かひとつ英語力を伸ばすための決定打となった「これは!という一冊・メソッド」をあげてみよ、と問われたとしたら、ワタクシの場合は「ありません」という回答になります。
読んで印象に残った本ならいくつかありますが、ではそれらの本が無ければいまの英語力を作り上げられなかったか?というと、おそらくそんなことはない。
そんな感覚があるんですよ。
結局、外国語を身につけるってのは、粘土や石膏で人体像を作りにかかるようなもので。
かりに目をみはるような超傑作の人体像が出来たとして、「あの腕の筋肉のところに使った粘土の質が最高で、この作品が一級品となる決め手になった」ってことはないわけです。
最高級品の粘土を一部に使ったとしても、他の部分で使った粘土がさほどよくなければ、結局混ぜこぜになってしまってわからない。
つまるところ最後に問われるのは「どんな人体像の作品ができあがったか」ということです。
この場合おわかりのとおり、粘土=読んだ本、人体像=英語・英会話力ですね。
いま本屋でどの一冊を買おうかウンウン悩んだところで、そのうち(数ヶ月後・あるいは数年後)に、アナタの中でその一冊の及ぼす影響が特定できなくなってくるんですよ。
「人生を変えた一冊の本との出会い」の存在を否定はしませんが、それでは「その一冊がなければアナタの人生はなかった」ということになるんでしょうか。
その本が関与しない別の人生が生じていたはず、ただそれだけのことではありませんか。
だから英語や英会話の力を伸ばしたくて、「なにかイイ本はないかな~」と書店めぐりをしているアナタ、もしあとで「これ買って失敗した」と思っても、実はたいして気にする必要はありません。
逆に「おぉ、この本のメソッドは素晴らしい!」と心酔するような一冊に出会ったとしても、それも長い目でみれば、上で述べたように「彫刻の材料としての粘土」に過ぎないのです。
ワタクシとしては、英語・英会話本を買ってなにか一つや二つ「オッこれは」と思える点や心に残ることに出会えたなら、もうそれで十分だと思います。
それは、英単語や英会話フレーズの覚え方・英語学習のノウハウ・英語圏の背景知識・発音のちょっとしたコツ・あるいは著者の英語学習の苦労話など、何であってもいいんですが。
一つくらいアナタの心にhookするものがあったなら、それで十分なんです。
少しシニカルに言えば、書店の本棚に並ぶ何百冊・何千冊もの英語・英会話本が、アナタの英語人生に及ぼす影響なぞ、本当にささやかなものなのです。
だからこの本がいいとかあの本がよくないとか、あんまり過大な期待をせず、良さそうだと思ったらパッと買う。
もしくはサッと見て、心惹かれないようなら買わないことです。
ま、要するに心を軽く持って、あんまり悩まないことですよ。