「ネイティブと話す機会がない」とお嘆きのアナタに、オススメの一冊。
最近、英語・英会話本のオススメがフレーズ集などに偏りがちでしたが、久しぶりに「今の日本における英語と英会話の現状」を正面から論じた、読みごたえのある一冊の新刊に出会いましたので、ご紹介します。
「ネイティブ信仰はやめなさい」 (古波蔵 勇著、イプシロン出版企画、1260円)
作者の方は、どうもこれが、はじめての著書のようですね。
英語の教授暦20年以上で、英検一級、TOEICスコア990、通訳案内士の資格を持っているものの、海外には旅行を含めて一度もいったことがない、英語の達人のようです。
本を開いた直後、「はじめに」のところで、著者の主張としていくつか書かれている下記のフレーズをちらっと見ただけで、思わず読んでみたくなりませんか?
これまで英語・英会話力アップのために常識的に当然だろうと世間一般で思われていることが、なぜそうではないのかを、わかりやすく論理的に、ユーモアも交えながら、説得力のある説明を展開してくれています。
・小学校英語必修化は日本を滅ぼす。
・ネイティブは英語を教えることができない。
・英会話は一人でも練習できる。
・ネイティブは英語の文法を知らない。
・「生きた英語」は幻想に過ぎない。
・ネイティブも実は発音がわからない。
いかがですか、なかなかに刺激的(笑)でしょう?
他にも、「聞けなければ話せないは大嘘」「TOEIC信仰もやめなさい」など、世間にはびこる英語上達法と一線を画した主張を、理由付きで丁寧に説明しています。
ネイティブとの対比で英語や英会話の実力をはかりがちな傾向を戒め、同時に海外留学や英会話学校通いが無くたって英語はうまくなる(著者が生きた見本ですね)という希望を、この日本でネイティブとの会話など縁遠いままに、コツコツと英語を学ぶ人たちに、きちんと示してくれています…。
ワタクシもこれまでこのブログの中で、英語は国内でうまくなる、一人でも練習できる、TOEICがハイスコアでも英語力とは比例しない、などと書いてきましたので、本書の主張には、基本的に大いに賛成であります。
この筆者も述べていますが、「TOEICは900点台をマークしたら、もうそれで十分」という部分なども、体感的には、ホントにそうだと思いますね。
ただ、個人的には必ずしも賛同できない主張も、いくつかは当然ながらあります。
100%賛成というほうが、むしろおかしいですからね。
たとえば、「小学校英語必修化は日本を滅ぼす。」という主張については、ワタクシなどは最近は、小学生に英語を教えることもそう悪くないのではないか、と考えが変わってきていますので、必ずしも全面賛同とはいきませんでした。
主張のコアをはっきりさせるために、ある程度は枝葉の部分を切り捨てて骨太にまとめあげた感も、ないとはいえません。
しかし、この日本で海外留学信仰と留学ビジネスがこれだけ隆盛になっている背景に、「ネイティブといる環境が周りになければ、英語は上達しない」といったある種の国民的誤解(?)が根強くあることは事実ですから、それをくつがえす主張をきちんと一冊の本にまとめあげたことは、大いに評価されるべきだと思います。
ということで、TOEICの単語帳を買う余裕があるのなら、ぜひともこの本を先に読んでおくことを、おすすめします。
それにしても、「どうしても英会話学校に行きたいという人には、最近とみに元気のない某大手英会話学校『以外』を推薦している」という本書内のくだりには、つい笑ってしまいました…。