「マンガでおぼえるタイプの英会話本」では、おぼえられない理由。
英会話本がたまって何となくごちゃついてきた書棚を整理していると、「島耕作の成功するビジネス英会話」というタイトルの本が棚の奥から出てきたので、なつかしくなってつい、読み直してしまいました。
いつ、どういう意図で買ったのかはまったくおぼえてませんが、奥付が初版1999年の第一刷ですから、どうやら8年近く前に、買った本のようです。
島耕作が課長の時です。今は昇進して、専務(常務?)でしたっけ。
ま、それはいいんですが、ともかく、「マンガの吹き出しの日本語のセリフを、ナチュラルな英語に置き換えたら、こうなるよ」というスタイルの英会話学習本です。
いまや購入動機などすっかり忘れてはいますが、推量するに、「ビジネスの英会話シーンで出てくるようなごく自然な英会話フレーズを、たくさんおぼえたい」、と思っていた矢先に、「マンガのセリフ形式でおぼえるならば、きっとごく自然にアタマの中に入ってくるだろう」という期待感から、これを買ったんじゃないかと、思うんですね。
ところが、ですね。
この本はいまだ持ってはいるものの、もくろみとしては大はずれで、これが全然、アタマに入ってこなかったんですよ。
二・三箇所アンダーラインを引いた跡があるものの、他のページは、もう新品同様にキレイです。
「こういうスタイルは自分に合わない」と途中で気がついて、さっさと止めちゃったんですね、きっと。
最初にお断りしておきますと、この本だけがどうこう、というんじゃないですよ。
途中で放り投げた本は、もう数知れずですし。それにこの本、内容自体はきっちりしてますから、ちゃんとやったら、もしかしてそれなりに効果があがったかもしれません。
ただ、このように「好きなマンガを使って、楽しく英語をおぼえよう」というスタイルそのものが自分にはダメだったのだと、今となっては思います。
効果がありそうに、当時は思えたんでしょうね。
ほら、「マンガやイラストなどの視覚イメージがセットになっていると、英単語もおぼえやすい」って、ちまたの英会話教材とかでもアドバイスされてませんか?
でも、ダメなんですよね。少なくとも、ワタクシの場合は。
あとで思いだすことができるのは、そのとき印象に残ったシーンの絵柄や構図だけなんですよ。
その絵にくっついてた英語のセリフがでてこないし、マンガで登場していておぼえたはずのそのフレーズが、いざ自分の日常の現実となると、ちっとも脳裏に浮かんでこない。
思うに、ですね。
たぶんマンガを使うと、アタマの中に思い描くイメージが、そのマンガの一コマの構図・風景にあまりにも強く固定されてしまって、他の似たような現実の場面に遭遇したときに、強烈な絵柄がいの一番に浮かんできてしまって、セットになっていたはずの英語フレーズがアタマの片隅に押しやられてしまうことで、真っ先にイメージするのが、かえって難しくなっているんじゃないか?
そんなふうに、ひとりよがりな仮説をたてているんですよね…。
マンガが面白ければ面白いほど、アタマに残像として焼きつく絵柄が強烈に固定されるために、脳が、そこから応用をきかせてフレーズだけをとりだして、スムーズに別のシーンへと移ってはくれないのですよ。
むしろテキストだけがポンと置かれていて、それをおぼえていくほうが、かえって特定のイメージがついてないためか、様々なシーンに応用を利かせやすい気がするんですよね。
だから、「アタマの中に、イメージを自分なりに思い描く」ことと、「アタマの中に、はじめから固定されたイメージを焼き付けておく」ことは、似て非なるモノなのではないか?と思うわけです。
英語・英会話の表現を、どのような状況においても、自分の記憶の引き出しから自在に取り出してくるためには、イメージの固定がなされていないぶん、前者のほうが適しているように思います。
アタマの中に、おぼえたフレーズより先に一定のイメージが登場してくるようでは、かえって応用力がそがれることになるのではないか。
そう思ってます。
あ、でも今日の話は、ほとんど独断的所感というか、なんの実験的検証もなされていないわけで、言ってみれば、ひとり言ですが(笑)。
ただ、ほかにも「マンガでおぼえる英会話」をこれまで試してみて、うまくいかなかったヒトがいるかもしれないと思いましたので、ここにも同志がいるぞ!ということを、ちょっとお知らせしたかっただけです。
ある程度やってみて、これは自分にあわないやり方だなと思ったら、払った本代などを惜しまずに、また他人がなんと言おうとも、スパッとあきらめて、他のやり方を試してみる。
外国語の学習は、そういう部分も、確かに必要なんじゃないでしょうかね。
飽きっぽいという自らの性格的欠点と、紙一重の世界だとかろうじて自覚してはいますが(笑)。