リスニングの題材に、「街中や雑踏での英会話」をあえて選ぼう。
前回、ネイティブが数名いるグループの中で行う英会話の機会をなるべく持ちたいという話を書いていた時に、ちょっと思い出したことがありますので、本日はその話をします。
リスニングの練習教材・題材は、ネットに無料でも高品質のものがあふれかえっていまし、英会話の本なども、いまやCDが付いていないモノがむしろ少なくなりつつある時勢ですので、リスニング練習の機会そのものは、事欠かないように思います。
ただ、ちまたのリスニング教材や題材は、まだまだ「ナチュラル・スピードによる録音か、会話スピードを学習用にスロー編集したものか」、という点で、区分けされているものが多いように思います(なかには、「2倍速録音」とか、耳慣らしを目的として会話のスピードを人工的にあげたものもありますが、これは分類上は、ナチュラル・スピードの教材に属すると考えていいでしょう)。
もちろん、英会話をはじめたばかりだし、現在の自分のリスニングレベルにあわせて…という気持ちもわかりますので、英会話はまだまだ初心者…という方は、最初のうちはゆっくりとした会話スピードの教材を使うのも、もちろんよいでしょう。
いずれは、ナチュラル・スピードでの聴き取り練習に移行するわけですし、聴いた内容を自分自身で理解できているか確認しながら進まないと不安…という方も、いるでしょうから。
ただ、ナチュラル・スピードかどうかという点以外にも、たとえ初心者の方であっても時々は、並行して意図的な聴き取り練習を行っておいたほうがよいシチュエーションがあります。
それは、「注意深く耳を傾けないと聴き取りにくい、街中や雑踏などの環境で展開される英会話」です。
ともすれば英会話の教材は、スタジオ録音されたプロの話者によるきれいな発音のものが多いことは、ご存知ですよね。
ま、CD付の英会話教材を制作して販売する側としては、わざわざよく聴き取れないようなものを添付するというわけにもいかないでしょうけど。
文句を言う購入者だって出てくるでしょうし。
しかしながら、我々の日本語もそうですが、現実の人と人との会話は、なにも静かな部屋や会議室の中ばかりで行われているわけじゃないですね。
車のクラクションやスピーカーから流れる宣伝やCM、街頭のざわめきなどで、耳をそばだてないと相手の言っていることがよく聴き取れないような状況でなされることが、ごくごく普通にあるわけです。
人がごった返す駅のホームや空港での発着アナウンス、ざわつくオフィス周りの雑音に邪魔され相手の声がよく聴きとれない電話、後ろの数十台の展示テレビの音と館内CMがうるさい中での、店員とのやりとり…などなど、リスニングに集中しずらいという点では、いろいろな状況が思いつきます。
とにかく現実の我々の会話は、たえず背景の騒音・雑音とセットになって、展開されるものですよね。
だから、アナタが、いざ現実に英語でやりとりする時も、周りの雑音・騒音が非常にうるさい中で、相手のいうことを聴いたり、こちらが受け答えをしたりの状況が続くことが、むしろ現実には多いかもしれません。
ナチュラル・スピードかどうか、という点だけに心を奪われて、その英会話だけに集中できる、静かなスタジオ録音による音ばかりに慣れ親しんでしまうと、お互い言っていることがよく聴き取りにくい環境下でやりとりをしなくてはならない、いわば「実戦」の時に、意外にとまどってしまうものです。
そんなとき、「なんだか周りがうるさすぎて、聴き取れなかった。静かな部屋で二人きりで話していたなら、結構わかったと思うんだけど…」などと後でグチってみても、しょうがない話ですからね。
こういった、いわば「雑踏英会話」に慣れ親しんでおくことは、英会話の初心者であっても必要な、ある種の「訓練」だと思います。
日頃からこういう訓練をしておくと、周りが雑音だらけでも、なんとなく感覚が磨かれてきて、聴き取れなかった部分を、自分なりの感覚で類推し補って、全体を理解していくことなども、不思議と上手になってくるものです。
さまざまなリスニング教材の中にも、その辺りを意図してか、こういった聴き取りにくい環境下で録音されたものもいくつかありますので、ネットや書店で探してみましょう。
「ニューヨーク、ストリートでのライブ録音」「現地で生録音、路上インタビュー」といったテーマにもとづいて編集されているようなリスニングの題材を探し出し、周りの雑音にヘキエキしながらも、時々は聴き取りの練習をしてみる。
こういったアプローチを、実践的なリスニング力強化のために、オススメしたいところですね。